雨風食堂日記【甘味処 川越 あかりや店主の日々雑感】

2006年11月9日(木)

父親たちの星条旗


妻と一緒にクリント・イーストウッド監督の父親たちの星条旗を観に行きました。

第二次大戦中の日米の硫黄島での攻防を描いた戦争映画なのですが、イーストウッドらしいセンスの良い映画でした。戦闘シーンのリアルな描写はこの映画の製作にも加わっているスピルバーグの”プライベート・ライアン”のノルマンジー上陸のシーンを彷彿とさせ、戦争の地獄図をストレートに表現するわけですが、この映画のすばらしいところは、硫黄島の戦いの英雄の帰国後の人間模様を交えて、動と静で戦争の無意味さと喪失感を掘り下げている点です。また、人種問題や弱者の視点からの演出手法はストーリーに深みを与えているなあと思いました(前作の”ミリオンダラー・ベイビー”にも見られましたが)。だれでも見たことのある、あの星条旗を数人の兵士が立てる写真の、表面的にはシンボリックな存在と実際の兵士の虚無感との対比がまさにこの映画のテーマなわけです。

本当に前線で戦っていた人は、実際は土塁の上から鉄砲だけ出して撃っていたとか、この映画でもありましたが味方が傷ついた仲間を手当てするなんて稀なことで皆自分の命を守るのが精一杯だったというのが事実なんだろうと思います。英雄など存在しない、そして地獄を見た人間は多くを語らない、忘れたいからだ、という言葉が心に残りました。

また、最後の病室でのシーンでは私は涙があふれて止まらなかったのですが、”いい父親でなかった。なにもしてやれなかった。”というセリフにはイーストウッドのもっと戦争を語らないと、という後世への責任を代弁させているんじゃないかなあと感じました。:cry:

名優は名監督になり得るのでしょうか?彼とロバート・レッドフォードの監督作品は一定のセンスを感じます。
字幕が終わるまで手抜きのない良い映画だと思いますが、イーストウッド監督の映画は音楽のセンスの良さも秀逸です。2部作の”硫黄島からの手紙”も楽しみに観に行きたいと思います。

甘味処 川越 あかりや

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